ドメスティックバイオレンス(DV)は、配偶者や恋人など親密な関係にある人から振るわれる暴力を指します。DVには様々な形態があり、それぞれが離婚事由として認められる可能性があります。
主なDVの種類は以下の通りです。
民法770条では、離婚原因として「婚姻を継続し難い重大な事由」が規定されており、DVはこれに該当します。DVの程度や頻度によっては、一度の行為でも離婚が認められるケースもあります。
DVは決して許されるものではなく、被害者の心身に深刻なダメージを与えます。自分がDV被害者であることに気づかない場合もありますが、恐怖や不安を感じる関係性は健全とは言えません。
DVを理由に離婚するためには、客観的な証拠を集めることが非常に重要です。証拠がなければ「そんな事実はなかった」と言い逃れされる可能性があります。
効果的な証拠収集の方法
証拠は別居後に集めることが難しくなるため、同居中に安全に収集することが大切です。ただし、相手に証拠集めが発覚すると危険が増す可能性があるため、細心の注意が必要です。
安全な別居のための準備
別居する際は、相手に知られないよう慎重に行動し、新しい住所を知られないよう注意しましょう。
DV被害者が安全に離婚するためには、適切な法的手続きを踏むことが重要です。
離婚調停の申立て
調停では、DVの事実や証拠に基づいて、離婚条件(慰謝料、親権、財産分与など)について話し合います。相手がDVを認めず離婚に応じない場合は、調停不成立となります。
離婚裁判の提起
調停が不成立の場合、離婚裁判を提起することになります。
裁判では証拠が重要視されるため、客観的な証拠がなければDVの事実が認められない可能性があります。弁護士のサポートを受けることで、より効果的に手続きを進められます。
DV被害者は、離婚に際して適切な経済的補償を受ける権利があります。
慰謝料請求
DVを理由とする離婚では、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できます。慰謝料の金額は以下の要素によって変動します。
一般的なDVによる慰謝料の相場は100万円〜300万円程度ですが、重度のケースではそれ以上になることもあります。
財産分与
婚姻期間中に形成された財産は、原則として平等に分ける権利があります。
DVがあった場合でも、財産分与の割合が直接影響を受けることは少ないですが、隠し財産がある場合は弁護士のサポートを受けて調査することが重要です。
婚姻費用と養育費
別居中は婚姻費用、離婚後は子どもがいる場合は養育費を請求できます。
DV加害者が支払いを拒否する場合は、調停や審判を通じて法的に請求することができます。
DVからの離婚は法的手続きだけでなく、心理的な回復と新生活の構築も重要な課題です。
心理的回復のプロセス
DVの被害者は、PTSDや抑うつ、不安障害などの心理的影響を受けていることが少なくありません。回復のためには。
回復には個人差があり、時間がかかることを理解しましょう。焦らず自分のペースで進めることが大切です。
新生活の構築
公的支援制度の活用も検討しましょう。
DVからの回復と新生活の構築は、一人で抱え込まず、専門家や支援団体のサポートを受けながら進めることが重要です。時間をかけて少しずつ前に進んでいきましょう。
厚生労働省:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律
DVが存在する家庭では、子どもの親権や面会交流について特別な配慮が必要です。
親権の決定要素
DVがある場合、子どもの安全と福祉を最優先に親権が決定されます。
DVの証拠が十分にある場合、被害者が親権を獲得できる可能性は高くなります。子どもを連れて別居する場合は、「子の連れ去り」と主張されないよう、事前に法的アドバイスを受けることが重要です。
面会交流の取り決め
DVがあった場合の面会交流は慎重に検討する必要があります。
子どもの安全と心理的影響を最優先に考え、必要に応じて専門家(児童心理士など)の意見を取り入れることが重要です。
子どもへの心理的影響
DVを目撃した子どもは様々な影響を受ける可能性があります。
子どもの心のケアは専門家に相談し、適切なサポートを受けることが大切です。子どもの年齢や状況に応じた説明と、安心感を与える環境づくりを心がけましょう。
裁判所:面会交流について
子どもの最善の利益を考慮した親権・面会交流の取り決めは、弁護士や家庭裁判所の調停委員、児童心理の専門家などの助言を得ながら進めることが望ましいでしょう。