契約結婚とは、恋愛感情だけでなく、互いの条件や将来の取り決めを明確にした上で結婚する形態を指します。特に近年では、離婚率の上昇に伴い、万が一の場合に備えて婚前に契約書を交わすカップルが増えています。
婚前契約書(プレナップ)とは、結婚前に夫婦間の権利や義務、離婚時の財産分与などについて取り決めた法的文書です。日本ではまだ一般的ではありませんが、2025年には新たな結婚の常識になるとも言われています。
婚前契約書の主な目的は、将来起こりうるトラブルを未然に防ぎ、万が一離婚することになった場合のルールを明確にすることです。これにより、感情的な対立を減らし、スムーズな解決を図ることができます。
契約結婚において、離婚時に備えて事前に取り決めておくべき条件は多岐にわたります。特に重要なのは以下の項目です。
これらの条件を明確に文書化しておくことで、離婚時の交渉が円滑に進み、無用な争いを避けることができます。特に浮気など不貞行為があった場合の条件を明確にしておくことは、将来のトラブル防止に効果的です。
浮気が原因で離婚を考える場合、契約結婚や婚前契約書が大きな意味を持ちます。婚前契約書に浮気に関する条項を含めておくことで、不貞行為があった場合の対応が明確になります。
具体的には、以下のような条項を設けることが一般的です。
婚前契約書に浮気に関する条項があれば、実際に不貞行為があった場合、感情的な対立を最小限に抑えながら、契約に基づいた解決が可能になります。これにより、長期化しがちな離婚協議を短縮できるメリットがあります。
また、このような明確な罰則があることで、浮気の抑止力になるという側面もあります。お互いに契約内容を理解し、尊重することで、より健全な夫婦関係を築ける可能性も高まります。
婚前契約書は、どこまで法的に有効なのでしょうか。日本の法律では、婚前契約書自体を直接規定する法律はありませんが、基本的には「契約自由の原則」に基づき、一定の効力が認められています。
ただし、すべての内容が無条件に認められるわけではありません。法的効力が認められやすい項目と認められにくい項目があります。
法的効力が認められやすい項目
法的効力が認められにくい項目
より確実な法的効力を持たせるためには、以下の点に注意が必要です。
特に重要なのが公正証書化です。公正証書にすることで、契約不履行の際に裁判を経ずに強制執行が可能になります。例えば、離婚時に約束した慰謝料が支払われない場合、直ちに給与や財産の差し押さえができるようになります。
契約結婚の概念は進化し続けており、近年では「1年更新制」という新しい形態も注目されています。これは文字通り、結婚契約を1年ごとに見直し、更新していく方式です。
この方式の特徴は以下の通りです。
作家の妹尾河童氏と風間茂子氏は、50年にわたる「1年更新の契約結婚」を続けており、「緊張感があり、醍醐味がある」と語っています。毎年契約を更新することで、お互いの関係を見つめ直し、新鮮さを保ち続けることができるのです。
この方式は、従来の「永続的」な結婚観に一石を投じるものであり、現代の多様な価値観や生き方に合った選択肢と言えるでしょう。特に、キャリアや生活環境が急速に変化する現代社会において、柔軟な結婚の形として注目されています。
ただし、1年更新制を採用する場合も、基本的な契約内容(財産分与や離婚条件など)はしっかりと定めておくことが重要です。更新の際には、その時点での状況に応じて条件を見直すことができます。
婚前契約書を作成する際の基本的な手順は以下の通りです。
1. お互いの希望や条件を話し合う
まずは二人で率直に話し合い、契約に含めたい内容を明確にしましょう。この段階では、お互いの価値観や将来の展望について理解を深めることが重要です。特に以下の点について話し合いましょう。
2. 財産状況の開示
婚前契約書の作成には、お互いの財産状況を正直に開示することが不可欠です。以下の情報を共有しましょう。
3. 専門家への相談
弁護士など法律の専門家に相談し、契約内容の法的有効性を確認しましょう。専門家は以下の点でサポートしてくれます。
4. 契約書の作成
専門家の助言を得ながら、正式な契約書を作成します。契約書には以下の要素を含めるべきです。
5. 公正証書化の検討
より確実な法的効力を持たせるために、公正証書にすることを検討しましょう。公正証書にすると、以下のメリットがあります。
婚前契約書の作成費用は、内容の複雑さにもよりますが、一般的に弁護士に依頼する場合は10万円〜30万円程度が相場です。公正証書にする場合は別途公証人手数料がかかります。
浮気が原因で離婚を考えるケースは多いため、婚前契約書に浮気防止や浮気が発覚した場合の対応を明記しておくことは非常に重要です。以下に、浮気に関する契約条項の具体例を紹介します。
1. 浮気の定義
第○条(不貞行為の定義)
本契約において「不貞行為」とは、以下の行為を指す。
1. 配偶者以外の異性との肉体関係を持つこと
2. 配偶者以外の異性と恋愛関係にあると認められる言動を行うこと
3. 配偶者以外の異性とのデートや旅行など、社会通念上不適切と判断される親密な交流を持つこと
4. SNSやメールなどで配偶者以外の異性と恋愛感情を伴うやり取りを行うこと
2. 浮気発覚時の慰謝料
第○条(不貞行為に対する慰謝料)
1. 甲または乙が不貞行為を行った場合、不貞行為を行った者は相手方に対し、金○○○万円を慰謝料として支払うものとする。
2. 前項の慰謝料は、不貞行為が発覚した日から30日以内に一括で支払うものとする。
3. 不貞行為が複数回または長期間にわたる場合、慰謝料の増額について別途協議するものとする。
3. 浮気の証拠
第○条(不貞行為の証明)
1. 不貞行為の証明は、以下のいずれかの方法によるものとする。
(1) 本人の自認
(2) 写真、動画、音声記録などの客観的証拠
(3) 第三者の証言
(4) その他、社会通念上不貞行為と認められる証拠
2. 証拠の収集は、プライバシーの侵害や違法行為に当たらない範囲で行うものとする。
4. 離婚手続き
第○条(不貞行為による離婚)
1. 不貞行為が原因で離婚する場合、本契約に定める財産分与の条項に従うものとする。
2. 不貞行為を行った者は、離婚手続きに誠実に協力するものとする。
3. 子がいる場合の親権および養育費については、子の最善の利益を考慮して別途協議するものとする。
これらの条項は一例であり、実際には個々の状況や希望に合わせてカスタマイズすることが重要です。また、法的効力を確保するためにも、専門家のアドバイスを受けながら作成することをお勧めします。
契約結婚において、財産分与と慰謝料の取り決めは最も重要な要素の一つです。これらを明確に定めておくことで、離婚時の金銭トラブルを大幅に減らすことができます。
財産分与の取り決め方
財産分与に関しては、以下の点を明確にしておくことが重要です。
慰謝料に関する取り決め
慰謝料については、以下の点を契約書に盛り込むことが考えられます。
具体的な条項例
第○条(財産分与)
1. 婚姻前から各自が所有していた財産(預貯金、不動産、有価証券等)は、原則として財産分与の対象としない。
2. 婚姻中に取得した財産は、取得名義の如何にかかわらず、原則として甲乙均等に分配するものとする。
3. 自宅不動産については、離婚時に売却し、その売却代金から住宅ローン残債を控除した金額を甲乙均等に分配する。ただし、一方が居住を継続する場合は、相当な対価を他方に支払うものとする。
第○条(慰謝料)
1. 甲または乙が、以下の行為を行った場合、当該行為を行った者は相手方に対し、以下に定める金額を慰謝料として支払うものとする。
(1) 不貞行為:金○○○万円
(2) 身体的暴力:金○○○万円
(3) 継続的な精神的暴力:金○○○万円
(4) 悪意の遺棄:金○○○万円
2. 前項の慰謝料は、離婚成立日から60日以内に一括で支払うものとする。ただし、双方の合意がある場合は分割払いも可能とする。
これらの取り決めは、離婚時の紛争を未然に防ぐだけでなく、結婚生活中のお互いの権利と義務を明確にする効果もあります。特に浮気などの問題が生じた場合、感情的な対立を避け、契約に基づいた冷静な対応が可能になります。
契約結婚や婚前契約書の作成において、専門家の関与は非常に重要です。適切なタイミングで専門家に相談することで、法的に有効な契約を結ぶことができます。
専門家に相談すべき理由
婚前契約書の全ての条項が無条件に法的効力を持つわけではありません。専門家は、どの条項が法的に有効で、どの条項が無効になる可能性があるかを適切にアドバイスできます。
一方に著しく不利な契約は、後に無効と判断される可能性があります。専門家は、両者にとって公平な契約内容を提案し、将来のトラブルを防止します。
契約書の作成から公正証書化まで、適切な法的手続きを踏むことで、契約の効力を高めることができます。
相談すべき専門家
婚前契約書の作成には、家族法に詳しい弁護士への相談が最も効果的です。弁護士は法的観点から契約内容をチェックし、適切な条項を提案します。
公正証書化する場合には公証人への相談が必要です。公証人は契約内容の適法性を確認し、公正証書としての要件を満たすようアドバイスします。
財産分与や相続に関する税金面でのアドバイスが必要な場合は、税理士やファイナンシャルプランナーへの相談も検討しましょう。
相談のベストタイミング
婚前契約書は文字通り「婚前」に作成するものです。理想的には、結婚の意思決定後、入籍の2〜3ヶ月前には専門家への相談を始めるべきです。
お互いの財産状況を開示し、基本的な契約内容について話し合った後に専門家に相談すると、より具体的なアドバイスを受けられます。
自分たちで契約書の草案を作成した後、専門家にチェックしてもらうという方法も効果的です。
専門家への相談費用
弁護士への相談費用は、初回相談料が5,000円〜10,000円程度、契約書作成の場合は10万円〜30万円程度が一般的です。公正証書化する場合は、別途公証人手数料として数万円程度がかかります。
婚前契約書作成の弁護士費用相場と解決事例
専門家に相談することで追加費用はかかりますが、将来的なトラブルや訴訟費用を考えれば、十分に価値のある投資と言えるでしょう。特に浮気が原因で離婚を考えているケースでは、感情的になりがちな交渉を冷静に進めるためにも、専門家のサポートは非常に重要です。