離婚手続きを進める上で、収入を証明する資料は非常に重要です。特に養育費や婚姻費用の算定、財産分与を行う際には、双方の正確な収入状況を把握する必要があります。
所得証明書は、その代表的な収入証明資料の一つです。所得証明書とは、市区町村の役所で発行される公的な証明書で、前年の所得金額や課税額などが記載されています。この他にも、離婚手続きで必要となる収入資料には以下のようなものがあります。
これらの資料は、離婚調停や裁判において、養育費や婚姻費用の算定基準となる「算定表」を使用する際の基礎資料となります。
離婚手続きに必要な所得証明書や課税証明書は、どのように取得すればよいのでしょうか。基本的な取得方法と注意点について解説します。
課税証明書・所得証明書の取得方法
重要な注意点。
離婚において養育費を適切に決定するためには、双方の正確な収入情報が不可欠です。所得証明書はその基礎となる重要な資料です。
養育費は、子どもの年齢や人数、両親の収入に基づいて算定されます。裁判所は「養育費算定表」という基準を用いて、標準的な養育費の目安を示しています。この算定表を使用するためには、双方の総収入を正確に把握する必要があるのです。
養育費算定の基本的な流れ
所得証明書などの収入資料の提出を拒否された場合、養育費の取り決めが難航する可能性があります。そのような場合、以下の対応が考えられます。
養育費は子どもの健全な成長に必要な費用であり、適切な金額を決定するためには、正確な収入情報の把握が不可欠です。所得証明書などの収入資料は、その基礎となる重要な証拠となります。
離婚を考えている場合、財産分与のために必要な資料を事前に準備しておくことが重要です。特に別居後は相手の資産状況を把握することが難しくなるため、同居中に必要な資料を収集しておくことをおすすめします。
財産分与のために準備すべき資料
これらの資料は、財産分与の対象となる共有財産を正確に把握するために必要です。財産分与は原則として婚姻中に協力して築いた財産を対象とし、別居開始時点が基準となることが多いため、別居前に資料を収集しておくことが重要です。
特に注意すべき点として、別居後は相手名義の預金口座や資産状況を調べることが難しくなります。また、市区町村の窓口では、同居家族でないと相手の課税証明書や固定資産税評価証明書を取得できないことが多いため、別居前に必要な資料を収集しておくことが賢明です。
離婚協議や調停の過程で、相手が収入を過少申告したり、所得証明書を改ざんしたりするケースがあります。このような収入偽装のリスクにどう対処すべきでしょうか。
収入偽装が疑われるケース
収入偽装への対処法
市区町村が発行する公的な証明書であり、偽造は公文書偽造罪に該当する重大な犯罪となるため、比較的信頼性の高い資料です。
弁護士に依頼すれば、弁護士法23条の2に基づく照会制度を利用して、勤務先に対して給与情報の照会が可能です。
裁判所を通じて、勤務先や税務署などの第三者機関に対して資料の提出を求めることができます。
住居、車、旅行、趣味などの生活水準から、実際の収入を推計する方法もあります。
同居中の家計簿や支出記録、クレジットカードの利用明細などを保存しておくことで、実際の収入水準を推測する材料になります。
収入証明書類を偽造することは私文書偽造罪に該当する可能性があり、発覚した場合は刑事罰の対象となるだけでなく、離婚裁判においても著しく不利になります。調停段階では提出された書類の真偽が厳密に問われないこともありますが、裁判に移行した場合は詳細な調査が行われることもあります。
収入偽装が疑われる場合は、早めに弁護士に相談し、適切な対応策を検討することをおすすめします。
離婚後は税金面でもさまざまな変化が生じます。所得証明書に反映される所得控除や税額控除にも影響があるため、事前に把握しておくことが重要です。
離婚後の主な税金関連の変更点
離婚すると配偶者に関する控除が受けられなくなります。これにより所得税や住民税の負担が増加する可能性があります。
子どもの親権や監護権を持たない親は、子どもに関する扶養控除が受けられなくなります。一方、親権や監護権を持つ親は、引き続き扶養控除を受けることができます。
離婚後、子どもを養育する親は条件を満たせば「ひとり親控除」(年間35万円)や「寡婦控除」(年間27万円)を受けられる可能性があります。
離婚により住宅の所有権が変わる場合、住宅ローン控除の適用にも影響があります。財産分与として住宅を取得した場合の特例もあります。
養育費や慰謝料を受け取る側には原則として課税されませんが、金額が社会通念上相当と認められる範囲を超える場合は贈与税の対象となる可能性があります。
離婚後の年末調整の注意点
離婚後の最初の年末調整では、婚姻状況の変化を会社に申告する必要があります。これにより、源泉徴収票や所得証明書の内容も変わります。特に以下の点に注意が必要です。
離婚により税負担が増加する場合が多いため、事前にシミュレーションを行い、家計への影響を把握しておくことをおすすめします。また、税金面での不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。