接近禁止命令とは?DV被害者のための申立て方法と手続きの流れ

接近禁止命令とは?

接近禁止命令とは、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者を保護するために、裁判所が加害者に対して発令する保護命令の一種です。この命令により、加害者は被害者の身辺につきまとったり、住居や勤務先の周辺を徘徊したりすることが禁止されます。接近禁止命令は、DV防止法(正式名:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)第10条に基づいて発令されます。

接近禁止命令の要件

接近禁止命令が発令されるためには、以下の要件を満たす必要があります:
申立人と相手が婚姻関係、事実婚関係、同棲関係にあること
その関係継続中に相手による暴力行為または脅迫行為が行われたこと
将来的に身体的暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれがあること
ただし、同棲していない恋人関係の場合や、関係が終了した後に暴力や脅迫が始まった場合は、接近禁止命令の申立てはできません。

禁止される行為

接近禁止命令により禁止される行為は次のとおりです:

  • 被害者の身辺の付きまとい
  • 被害者の住宅・勤務先・常在している周辺へのうろつき

ただし、メールや電話での接触は禁止されていないため、これらを禁止する場合は別途「電話等禁止命令」を申立てる必要があります。

申立ての手続き

接近禁止命令の申立て手続きは以下の流れで進行します:
DVセンターや警察への相談:まずは警察やDVセンターに相談し、DVの証拠を集めます。
申立ての準備:証拠を基に申立書を作成します。証拠としては、医師の診断書、暴力で負った外傷の写真や動画、脅迫の音声データなどが必要です。
裁判所への申立て:申立書を裁判所に提出し、口頭弁論や審尋が行われます。
接近禁止命令の発令:裁判所が証拠を基に判断し、接近禁止命令を発令します。

注意点

接近禁止命令を申し立てる際には、以下の点に注意が必要です:

  • 証拠の重要性:裁判所は提出された証拠に基づいて判断するため、客観的な証拠が必要です。特に、申立ての直近の証拠が望ましいです。
  • 住所の秘匿:申立書には現在の住所を記載しないようにし、相手方に知られないように注意します。
  • モラハラは対象外:身体的暴力や脅迫が要件となるため、モラハラ(精神的虐待)は接近禁止命令の対象にはなりません。

その他の保護命令

接近禁止命令以外にも、以下のような保護命令があります:

  • 電話等禁止命令:加害者が被害者に電話やメールで連絡することを禁止します。
  • 子への接近禁止命令:加害者が被害者の子供に接近することを禁止します。
  • 親族等への接近禁止命令:加害者が被害者の親族に接近することを禁止します。
  • 退去命令:加害者に対し、被害者と共に生活している住居から退去することを命じます。

これらの保護命令は、接近禁止命令と同時に発令されるか、既に発令されている場合にのみ有効です。
接近禁止命令は、DV被害者の安全を確保するための重要な手段です。申立てを検討している場合は、専門の弁護士やDVセンターに相談することをお勧めします。