コ・ペアレンティングとは、離婚後も両親が協力して子育てを行う考え方です。「Co-Parenting」という英語から来ており、「共同養育」と訳されることもあります。離婚という大きな環境変化の中でも、子どもの健全な成長を支えるために、両親が親としての責任を果たし続ける姿勢を指します。
浮気が原因で離婚を考えている場合、感情的な対立が生じやすく、子どもを巻き込んでしまうリスクが高まります。しかし、子どもの幸せを最優先に考えるならば、元夫婦間の問題と親子関係は切り離して考える必要があります。コ・ペアレンティングは、そのための具体的な方法論を提供してくれるのです。
研究によれば、離婚後の父母の関係性は子どもの適応に大きな影響を与えることが明らかになっています。特に、葛藤的なコ・ペアレンティングは子どもの適応を直接低下させる一方、協力的なコ・ペアレンティングは父母と子どもとの関係性を良好にすることを通じて、子どもの適応を促進することが示されています。
コ・ペアレンティングは、1981年にAhronsによって概念化された考え方で、離婚後の元夫婦の関係性に着目したものです。日本でも近年、この考え方が注目されるようになってきました。
コ・ペアレンティングの本質は、「親としての関係」と「夫婦としての関係」を分けて考えることにあります。たとえ夫婦関係が終わっても、子どもにとっての親であることは一生続くという認識が基本となります。
コ・ペアレンティングが重要である理由は、以下の点にあります。
科学心理学者による26年間にわたる研究によれば、父親の優しさやサポートは、特に娘の自尊心にプラスの効果があることが判明しています。また、男の子にとっては、父親との関係がアイデンティティや目的意識の構築に強い影響を与えるとされています。このことからも、離婚後も両親が子どもの人生に関わり続けることの重要性が理解できます。
離婚は子どもにとって大きな環境変化であり、適切なサポートがなければ心理的な悪影響を及ぼす可能性があります。家庭裁判所の事例分析によると、学童期前半の子どもが父母のどちらかを選ぶよう迫られ、その後不適応が生じたケースや、同居親から別居親の悪口を聞くうちに別居親に怒りの感情を抱くようになったケースが報告されています。
一方、効果的なコ・ペアレンティングが実践されると、子どもは以下のような心理的メリットを得られます。
研究によれば、父母の協力的コ・ペアレンティングは、父母と子どもとの関係性を良好にすることを介して、子どもの適応を良好にすることが示されています。つまり、離婚後も両親が協力して子育てに取り組むことで、子どもは心理的な安定を保ちやすくなるのです。
特に注意すべき点として、同居親が別居親の悪口を子どもに言うことは、子どもの心理的負担を大きく増加させます。子どもは両親を愛しているため、どちらかの親を否定されると自分のアイデンティティの一部も否定されたように感じ、深い葛藤を抱えることになります。
浮気が原因で離婚を考えている場合、特有の課題が生じます。裏切られた側の感情的な傷つきや怒りは非常に大きく、元パートナーと冷静に子育てについて話し合うことが難しい状況に陥りがちです。
浮気による離婚でコ・ペアレンティングを実践する際の主な課題には以下のようなものがあります。
これらの課題に対処するためには、まず自分自身の感情を整理することが重要です。必要であれば、カウンセリングなどの専門的なサポートを受けることも検討しましょう。パートナーへの怒りや失望と、子どもの幸せを最優先にする親としての責任を分けて考えることが、効果的なコ・ペアレンティングの第一歩となります。
また、浮気による離婚の場合、子どもに対して相手の親をどう説明するかも難しい問題です。年齢に応じた適切な説明を心がけ、相手の親を否定するような言動は避けるべきです。子どもは自分のアイデンティティの半分を各親から受け継いでいるため、どちらかの親を否定されると自己否定につながる可能性があります。
効果的なコ・ペアレンティングを実践するためには、具体的な計画と取り組みが必要です。以下に、コ・ペアレンティングを始めるための具体的なステップを紹介します。
1. 養育計画の作成
養育計画(ペアレンティングプラン)は、子どもの生活や教育に関する具体的な取り決めを文書化したものです。以下の内容を含めると良いでしょう。
2. 効果的なコミュニケーション方法の確立
元パートナーとのコミュニケーションは、ビジネスライクに保つことが重要です。
3. 子どもを中心に考える姿勢の維持
常に子どもの最善の利益を優先することを心がけましょう。
4. 専門家のサポートの活用
必要に応じて、以下のような専門家のサポートを検討しましょう。
アメリカなど海外では、ペアレンティング・コーディネーターという専門家が、離婚後の共同養育をサポートする制度が確立されています。日本でもこうした専門的サポートを活用することで、より円滑なコ・ペアレンティングが可能になるでしょう。
離婚後のコ・ペアレンティングにおいて、父親の役割は特に重要です。従来、離婚後は母親が子育ての中心となるケースが多かったですが、父親の存在と関わりが子どもの発達に大きな影響を与えることが研究で明らかになっています。
科学心理学者による26年間にわたる研究によれば、父親の優しさやサポートは、特に娘の自尊心にプラスの効果があることが判明しています。また、母親の愛情よりも父親の優しさやサポートの方が、娘の自尊心にプラスの効果があることも示されています。
男の子にとっては、父親との関係がアイデンティティや目的意識の構築に強い影響を与えるとされています。「父性」を通じてしっかりとした自尊心が芽生えなかった場合、目的意識を見つけられず、目的なく物事を続けていくだけになってしまう可能性があります。
父親が子どもに与える具体的な影響には、以下のようなものがあります。
離婚後も父親が子どもの生活に積極的に関わることで、これらの発達を支援することができます。具体的には、以下のような関わり方が効果的です。
「子供との関わりは、『今日一日どうだった?』というシンプルな質問で十分。ただ、子供の周りで起こっていることを把握できるように、さらに具体的な質問を重ねていくことも忘れてはならない」というアドバイスは、特に別居親となる父親にとって重要です。また、「ハグ」や「膝の上だっこ」などの身体的接触は、子どもに安心感、安全感、そして父親との一体感を芽生えさせる効果があります。
離婚後も父親が子どもの人生に積極的に関わり続けることで、子どもは両親からの愛情を実感し、より健全な発達を遂げることができるのです。
コ・ペアレンティングを成功させるためには、適切な心構えと対立が生じた際の解消法を身につけることが重要です。特に浮気が原因の離婚では感情的な対立が生じやすいため、意識的な取り組みが必要となります。
成功するコ・ペアレンティングのための心構え
子どもにとって何が最善かを常に考え、自分の感情や欲求よりも優先させる姿勢が基本となります。
相手の親としての役割と能力を認め、尊重することが重要です。過去の夫婦関係の問題と親としての関係は切り離して考えましょう。
完璧なコ・ペアレンティングは存在しません。状況の変化に応じて柔軟に対応し、長期的な視点で取り組む忍耐力が必要です。
自分自身の心身の健康を保つことも、良い親であり続けるために重要です。必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
対立が生じた際の解消法
対立が生じても、すぐに反応せず、冷静になってから対応することが重要です。感情的になると建設的な解決が難しくなります。
「あなたは~すべき」という言い方ではなく、「私は~と感じる」という表現を使うことで、相手の防衛反応を減らすことができます。
子どもの幸せという共通の目標に立ち返り、そのために何が必要かを考えることで、対立を解消する糸口が見つかることがあります。
対立が解消できない場合は、カウンセラーや調停人など、中立的な第三者の介入を検討しましょう。
すべての問題を一度に解決しようとせず、小さな合意から始めて徐々に信頼関係を構築していくアプローチも効果的です。
離婚後の父母コペアレンティングは、協力的なコペアレンティングと葛藤的なコペアレンティングに分類されます。研究によれば、葛藤的なコペアレンティングは子どもの適応を直接低下させる一方、協力的なコペアレンティングは父母と子どもとの関係性を良好にすることを介して、子どもの適応を良好にすることが示されています。
コ・ペアレンティングを成功させるためには、過去の夫婦関係の問題にとらわれず、子どもの幸せという共通の目標に向かって協力する姿勢が何よりも重要です。対立が生じても、それを建設的に解決するスキルを身につけることで、子どもにとって最善の環境を提供することができるでしょう。
離婚後のコ・ペアレンティングが子どもに与える影響に関する法務省の調査研究
離婚後の父母コペアレンティング、ゲートキーピング尺度の作成と検証に関する研究